
商品詳細
発行年:1954
サイズ:直筆手紙のサイズ21×27cm
セット内容:①両面に書かれた直筆手紙1枚 ②封筒(1954年6月16日パリ消印付、切手)
③1954年当時のタイプ打ち略歴(手書き補筆あり)
④Schulson Autographsの英訳・解説シート
コンディション
経年並
注意事項
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ノークレーム&ノーリターンでお願いします。
店主よりコメント
清里現代美術館は、アーティストのオートグラフ、手紙などもコレクションしていました。今日はその中でも超弩級のアイテムをご紹介します。
「黒の画家(Outrenoir)」として20世紀美術史に不滅の足跡を残したフランスの巨匠、ピエール・スーラージュ(Pierre Soulages, 1919–2022)。彼が世界的な絶頂期へと駆け上がっていた飛躍の渦中——1954年に執筆した極めて貴重な直筆書簡および自身の手によるバイオグラフィー(略歴)一式です
▍「黒の画家」スーラージュと、現代アートへの架け橋
「黒の画家(Outrenoir=黒を超えた黒)」と呼ばれるフランスの巨匠、ピエール・スーラージュ(Pierre Soulages, 1919–2022)。キャンバスの上に大きな刷毛やヘラを使い、濃厚な黒い塗料を力強く削り・叩きつけるように重ねていく彼の画面は、見る角度や光の入り方によって白銀や青、茶の光彩を放ちます。
スーラージュにとって「黒」とは、暗闇ではなく「光を映し出すための彫刻的表面」でした。
一見すると難解に見える彼の抽象画ですが、1950年代の彼の思考を知ると、現代のミニマル・アートやコンセプチュアル・アートにどう繋がっていったのかがよく見えてきます。
感情の排泄からの脱却(ミニマリズムへの道)当時の抽象絵画は「画家の内面や感情を吐き出すもの」と解釈されがちでした。しかしスーラージュは「絵画は画家の心理状態の表象ではない」とし、作品タイトルから物語や意味を消して『絵画 200×162cm 1950年3月14日』のように「サイズと日付」だけで呼びました。
「感情を排し、物質そのものを提示する」というこの姿勢は、後のドナルド・ジャッドらのミニマリズム(「見えているものが全てだ」という思想)へ直結していきます。
「作品」から「空間と体験」へ光の反射で変化する彼の黒は、画面の中だけで完結しません。
「見る人が立つ位置」「照明」「時間経過」という空間全体と観客の体験を含めて初めて成立します。これは現代のインスタレーションや空間芸術の原点でもあります。
「描かない」ことによる概念化(コンセプチュアルへ)黒という極限の限定の中で「絵画とは何か?」を問い直し続けたアプローチは、表現行為そのものをアイデア(概念)化していく後のコンセプチュアル・アートの大きな土台となりました。
▍1954年の手紙に刻まれた「巨匠の素顔」1954年は、ニューヨークでの個展成功やヴェネツィア・ビエンナーレ出品など、スーラージュが世界のトップへ駆け上がった飛躍の年です。しかし、写真家イダ・カーへ送られたこの手紙で彼が語るのは、高慢な美術理論ではありません。「妻コレットへの深い信頼」、「旅先(南仏カマルグのジプシー巡礼)で目撃した民衆の圧倒的な熱気」、精神性を支える「日々の生活や手紙のやり取りという地道な労働」でした。偉大な概念を生み出した巨匠の足元には、日常の現実と誠実な生活があった——。神秘主義に逃げず、現実の物質や労働に向き合い続けた彼の生々しい人間性が息づく一次資料です。
▍日本とピエール・スーラージュの繋がり1954〜55年、日本の前衛美術・書道界への影響スーラージュの力強い黒は、1950年代初頭の日本にも巨大なインパクトを与えました。彼の作品は森田子龍らの「前衛書道(墨人会)」や「具体美術協会」、アンフォルメル運動など、日本の革新的なアーティストたちに熱狂的に受け入れられ、西洋の油彩と東洋の「墨」が時空を超えて響き合うきっかけとなりました。日本最高峰「高松宮殿下記念世界文化賞」を受賞(1992年)1992年には「世界文化賞」絵画部門を受賞。日本国内の美術界や研究者の間でも「巨匠中の巨匠」として位置づけられています。国内主要美術館の重要コレクション東京国立近代美術館、国立国際美術館(大阪)、大原美術館、愛知県美術館などに、1950年代からの彼の作品が収蔵されています。
▍受取人: イダ・カー(Ida Kar, 1908–1974 / 伝説的写真家。彼女が撮影したスーラージュのポートレートはロンドンのナショナル・ポートレート・ギャラリー蔵)
▍【店主の私感】善的な「書」と、スーラージュの黒
ちょっと乱暴な言い方かもしれませんが、スーラージュの絵画を初めて見たとき、どこか「京都のお寺にある、高僧(お坊さん)の書」や「禅画」に似ているな、と感じる方も多いのではないでしょうか。下書きなしで、一瞬の身体の動きと呼吸を紙に叩きつける一発勝負の「書」。そして、黒い墨の力強さと同時に「何も描かれていない余白(白)」を活かす東洋の美学。スーラージュ自身も「自分は黒を描いているのではなく、黒によって光を切り取っているのだ」と語っています。大きな刷毛を使い、一瞬の身体運動でキャンバスに黒を刻み込んだ彼の作品は、まさに時空を超えて日本の「禅」や「墨」の精神と共鳴していたのだと感じます。ヨーロッパの巨匠でありながら、私たちの身近にある「書道」や「寺院の静寂」と一本の太い線でつながっている——かも。
手紙の翻訳は下記に・・・
¥1,500,000
※この商品は1点までのご注文とさせていただきます。
【手紙の日本語全訳】
差出人: ピエール・スーラージュ(Pierre Soulages)
受取人: イダ・カー(Ida Kar / 写真家)
日付: 1954年6月16日(パリ)
親愛なるイダ・カー様
お送りいただいた素晴らしい写真を拝受いたしました。温かいお心遣いに深く感謝申し上げます。
返信が遅くなってしまい大変申し訳ありません。実は先日までパリを離れ、南仏の旧友たちを訪ねる旅に出ておりました。カマルグ地方のレ・ザンティエ=ド=ラ=メールにも足を伸ばしたのですが、ちょうど毎年恒例のジプシーの巡礼の時期にあたり、その土地全体を包む圧倒的な熱気と精神性に強い感銘を受けたところです。
普段、こうした手紙や事務的なやり取りは妻のコレットが書いてくれる(代筆する)ことが多いのですが、今回は私自身がペンをとって直接お返事を書いております。 コレットも非常に元気に過ごしており、あなたによろしくと申しております。
あなたが私のスタジオで撮影してくださった写真は、光の捉え方が実に見事であり、私の作品や空間の本質を鋭く見抜いておられることに深く感嘆いたしました。
またパリにお越しの際は、ぜひアトリエへお立ち寄りください。お会いできることを心より楽しみにしております。
敬具
ピエール・スーラージュ