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2025/02/24 14:51


清里現代美術館のアーカイブブックを二冊出版する事ができました。どちらもたくさんの方に手にしていただき心から感謝しております。
清里現代美術館とは何だったのか?そしてアーカイブプロジェクトとは?

これまで途切れ途切れに記す機会がございましたが、改めてまとめてみました。なかなかに永い年月と色々な方が関わっているため長文になります。ご容赦ください。
清里現代美術館とは
清里現代美術館は1990年から2014年まで山梨県清里に存在した伊藤四兄弟による個人美術館です。Joseph Beuys、Arnulf Rainer、FLUXUSを柱に公立中学校の美術教諭であった伊藤信吾氏(2017年没)が収集した現代アートのコレクションを常設展示していました。
信吾氏は教職を定年まで務めながらもコレクションを充実させ、時には展覧会の企画も担当、次兄の修吾氏(2023年没)が館長として清里に常駐しました。長兄修氏(2020年没)と末弟勝朗氏も美術館の活動を支えました。
清里現代美術館の主なプロジェクトは
・多田正美 サウンドエンカウンター(公演)
・John  cage Memorial
・1日2時間の音楽展
・抵抗の音楽展
・現代アーティストブックの世界展(主催:甲府市 企画協力) などがあります。


個人でできる範囲で出版物も制作しました。
しかしながら個人で美術館を運営していく限界、また伊藤兄弟の高齢化もあって、2014年、清里現代美術館は惜しまれつつ閉館しました。

その後、作品類はほぼ整理され、伊藤兄弟は静岡県網代近郊に居を移し、静養しながら暮らすことになります。
信吾氏は、その最中にあっても、自身の所蔵する書籍資料などのデジタルアーカイブ化の実現を探っていました。(このことについては、SKACでの限定配布物「シュバルの帰還」に記してあります。配布終了につき絶版 PDFで配布を計画中)



清里現代美術館アーカイブプロジェクトとは? NPO Telescopeの始まり
信吾氏が亡くなった際に、教え子で美術館の設立に関わり、退職後も氏の選書でネット古書店を運営していた経緯から筆者が膨大な量の蔵書資料を預かりました。このtelescope@art美術古書店が本格的に再開することになります。現住所でこれらを販売するにはネット古書店しか方法がありませんでしたが、限界を感じ東京の実店舗を持つ方々に特にephemeraの販売を手伝って頂こうとお話しをしたところ、高円寺のtata bookshop galleryの石崎孝多さんが、これはまとめる必要があるとディレクターをかって出てくださり、アーカイブブックプロジェクトが開始しました。

こうして出版されたのが、第一巻
KIYOSATO MUSEUM OF CONTEMPORARY ART. ARCHIVE I: EPHEMERAです。
クラウドファンディングで出版費用を集め、tata bookshop /galleryでは企画展も開催されました。
この時の展示計画を担当してくださったのは安川流加さん。
エフェメラを表も裏も見ることができるエファメラ専用の什器を作ってくださいました。


この有志のアーカイブプロジェクトは、2023年のTABFでEXHIBITIONとして展示されました。
この展示のために什器制作を安川流加さんで進めてくださったのはtwelvebooksの濱中敦史さん。この時に制作された什器は現在、濱中さんが運営するSKAC / twelvebooks内の、清里現代美術館常設展示コーナーで使用されています。

2023年5月、こうした一連の活動を円滑に進めるためNPO法人Telescopeを設立しました。
現在も様々な方がメインメンバーとして名を連ねてくださり活動を支えてくださっています。
安川さんには、エフェメラを展示する小型の什器「ephemera loom」をデザインしていただき、NPOの開発事業として現在初回予約受注を受付中です。


Art into Lifeの青栁 伸吾さんは、清里現代美術館が現代音楽に関する企画を開催していたことに着目し、KIYOSATO MUSEUM OF CONTEMPORARY ART. SOUND ARCHIVE Iとして、清里現代美術館で1992年に開催された JOHN CAGE MEMORIAL 展の際に、サウンドデザイナー広瀬豊が同展のために制作した音源を発掘 LP×CD×ブックレットという形でリリースする事業を展開していただきました。

この関連イベントは、アーカイブプロジェクトの石崎孝多さんのtata bookshop galleryで開催されています。
ー清里現代美術館アーカイブ・プロジェクトー “言葉と時間 ジョン・ケージからのメッセージを読み解く”
会場 : tata book shop
日時 : 2月13日 - 3月2日 | 13:00-21:00 [休廊日 / 月・火・水]
東京都杉並区高円寺北2丁目38-15
アーカイブブックプロジェクト第二巻はフルクサス関連の資料をまとめて出版する計画で、フルクサスの資料を掲載するにあたっては、版権許諾取得が重要な課題でした。清里現代美術館の伊藤信吾氏と永年の親交があり、評論家、エッセイスト、詩人である金澤一志さんに監修として入っていただき、ご指導いただきながら版権許諾手続きを進めました。
多くの財団がとても好意的に掲載をお許しくださり、無事に出版することができました。
第二巻は第一巻の判型と装丁を一新し、価格も見直しました。デザインは仁木順平さんです。
第一巻、第二巻共に
印刷をお願いしたのは、加藤文明社プリンティングディレクター平井 彰さん。様々にご尽力いただきました。
多忙なスケジュールの中、掲載作品の美しい写真を撮ってくださったのは尾原深水さんです。
苑スの鈴木貴也さんは、NPO活動では様々に力を貸してくださり、今は、SKAC / twelvebooks内にephemeral Dockを展開して、エファメラ文化を広く紹介する活動をしています。

なお、第二巻の出版記念の展覧会が恵比寿のPOSTさんで開催されています。
第二巻に掲載しきれなかった資料も含め、約400点を展示しています。
3月8日第二回のトークイベントは参加者を募集中です。ぜひお出かけください。お申し込みはこちら
KIYOSATO MUSEUM OF CONTEMPORARY ART ARCHIVE FLUXUS and its surroundings
会場: POST
〒150-0022 東京都渋谷区恵比寿南2-10-3
会期: 2025年2月14日(金)~2025年3月16日(日)
時間: 11:00-19:00
定休日: 毎週月曜日
協力: twelvebooks / telescope
ドリンク提供:MAQUETTE COFFEE SHOP

また、NPO Telescopeでは、今後清里現代美術館がアーティストブックのコレクションを有していたことから、現代のアーティストにアーティストブック(仮称)を作ってもらうプロジェクトも展開しています。第一回目はRondadeの佐久間磨さんです。完成までもう少しお時間頂戴しますが、斬新な出版物になることでしょう。
なお、この出版物は、NPO Telescopeの会員になると入会特典でもれなく支給されます。
今後も、NPO Telescopeでは、清里現代美術館旧蔵のコレクションなどを元に研究・運用しつつ、伊藤兄弟が社会に投げかけた、現代アートの斬新な感覚・感性・問いかけをより多くの方に触れていただける機会を創出して参ります。ぜひ、NPO Telescopeのインスタグラムをフォローお願いいたします。公式サイトこちらでも最新情報をお知らせしております。
応援してくださる方からご寄付も受け付けております。ぜひご支援をよろしくお願いいたします。

NPO Telescopeの公式サイト

当店がエファメラを扱っていることから、エフェメラを軸にこれまでの経緯を丁寧に取材してくださったPOPEYE WEBさんの記事が公開されています。ぜひこちらも併せてもご覧ください。
「エフェメラ」を探して。Vol.1『telescope』とエフェメラコレクション編
「エフェメラ」を探して。Vol.2 継承される『清里現代美術館』編